射法八節とは?
射法八節とは、弓道において弓矢を持って射を行う時の射術の手順(法則)のことを指します。
弓道を初心者から覚える場合には、まずその基本の手順である射術の法則となっている射法八節を理解するところから始まります。
古くから射法の形式を七道と呼ばれています。
別名では五味七道と言われています。
一本の矢を射るまでの一連の流れ(過程)を7つの項目に分け説明されています。
これだけでは、射法八節になりません。
近年、この七節に加えて「残身(残心)」という一節を加えて八節となったので、射法八節と呼ばれています。
射術の鍛錬には射法八節を終始関連し一環をなし、その間分離断絶することがあってはならない。
かみ砕くと・・・
八節の動きを連動させてスムーズに行うことが射術のテクニック『射法八節』ということです。
また射法八節は初段の審査で学科で出てくる所で、説明をしなければなりません。
難しく考えると射法八節の説明ができなくなるので、ここでは、『カンタンな説明』とあとから『詳しい説明』の2つに分けて解説していきます。
カンタンな説明で射法八節のコツを掴んで頂きより深い部分を学んで頂けたら幸いです。
初段の審査での説明をしなければならない射法八節。
まずは射法八節の『カンタンな説明』から解説していきます。
射法八節の『カンタンな説明』のコツ
とてもシンプルで分かりやす引用がありましたので、お借りしましたが、射法八節が『カンタンな説明』になっているので、昇段審査の前に丸暗記をしておくのが学科でのコツでもあります。
1、足踏みのコツ
角度は60度、的と爪先が一直線上にあるのがコツ
2、胴造りのコツ
脊柱及び項はまっすぐに伸ばし、重心は腰の中央に、丹田に力を入れるのがコツ
3、弓構えのコツ
取懸け、手の内、物見を行うのがコツ
4、打起しのコツ
角度は45度程度。両肩を下に沈め、ほぼ水平で体と平行にするのがコツ
5、引分けのコツ
左右均等にほぼ水平に!
口割りより下げず、弦を胸部につけ、縦横十文字をつくるのがコツ
6、会のコツ
詰合いと伸合いをしっかりおこなうのがコツ
7、離れのコツ
体の中筋から左右に開くように伸長し、自然に離れるのがコツ
8、残心(残身)のコツ
離れの姿勢を崩さず、その気合いを維持するのがコツ
(出典:Yahoo!知恵袋より)
審査で上記のようなことを暗記しておくだけでも初段審査の学科で役立ちます。
また、審査以外の稽古の時にも射法八節の心得が頭にあれば流れを『意識』して練習に打ち込めるのではないでしょうか。
それでは次に射法八節の『詳しい解説』に進んでいきます。
射法八節の各節の詳しい説明
1、足踏み(あしふみ)
角度は60度、的と爪先が一直線上にあると射法八節の『カンタンな説明』ではさせて頂きました。
初段の審査にも役立つ内容ですが、実際に射法八節を学び稽古に役立てるために見て頂きたいです。
それでは今回はもう少し掘り下げて解説していきましょう。
射法八節の「足踏み」は、弓道で弓を射る際に必要になる基本の足の踏み方です。
つまりは、射法八節の基礎となる最初の足の踏み方のことを言います。
矢を正しく射抜くため・的にあたるためには、まず正しい姿勢をつくることが必要です。
射法八節の基本姿勢を作る為にはまずは土台である足から姿勢を整える必要があります。
その為に射法八節の第1ステップが、正しい『足踏み』になるのです。
カンタンに足開きをするのではなく、角度や向きなども取り決めがあります。
射法八節の「足踏み」は、射位(弓を射る位置)で脇正面に向かって立ちます。動画でも増淵先生が解説してくれていますが、板の目を使うとわかりやすいです。
両方の足先は的の中心に合わせます。
的の中心と足先は一直線に八の字に開きます。
その角度はおよそ60度で、両足先の間隔は、およそ自分の矢束(やつか)位とするとわかりやすいでしょう。
足の開き方(足踏み)には2つの方法がありますが、どちらを行っても良いです。
方法その1
的を見ながら左足を的の中心に合わせて半歩足踏みして開きます。
次に右足に左足をひきつけてから、右足を扇形に踏み開きます。
この時に難しいのは・・・足下を見ないでこの動作を行う事です。
初心者のうちは射法八節の足踏みの動作も気になりなかなか足下を見ないで行うのは難しいかもしれません。
自宅などで、鏡の前などで足踏みの練習をして感覚を養うと実践で役立つでしょう。
方法その2
的をみながら左足を的の中心に向かって半歩踏み開きます。
次に眼で足下を確認して、右足をこれと反対に半歩踏開く、このとき開く両足の膝関節は常に自然体であることがたいせつになります。
両足の足底が地面に定着していること。
下半身を安定されて、腰がしっかりと座っていること。
これが次の2節目の「胴造り」の基礎となるわけです。
足踏みでの補足説明
- 『足踏み』とは、射手が矢を放つ一連動作の時に、的と射手の相対的位置を決定する最初の行射動作。
- 『脇正面』とは、射位から的に向かって右方向を指す。射位で胴造りをした時の、体の正面方向。
- 『射位』とは、射場において、弓を射るべく決められた場所・定位置のこと。
2、胴造り(どうづくり)
脊柱及び項はまっすぐに伸ばし、重心は腰の中央に、丹田に力を入れる
と射法八節の胴造りについてカンタンな説明では解説させて頂きました。
初段の審査にも役立つ内容ですが、実際に射法八節を学び稽古に役立てるために見て頂きたいです。
ここでも射法八節の胴造りについて掘り下げて解説していきましょう。
「胴造り」は、「足踏み」を基礎として、両足の上に腰から上の体を正しく置きにいく動作のことです。
腰を足踏みの上に安定させて、左右の肩を沈め、脊柱と項を真っ直ぐに伸ばし、全体のバランスの中心を腰の中央に置きます。
心気を丹田におさめる動作である。
この時に、弓の本弭(もとはず)は左膝頭に置きます。
右手は右腰の付近におさめます。
胴造りの動作と丹田などの配置によって全身の呼吸を整えます。
縦は天まで真っすぐに伸びているイメージです。
そして横へは左右に柔軟に動けるような柔らかいけど隙の無い自然体の構えをつくります。
気息を整えることがここでのポイントになります。
射法八節の胴造りでは、おとなしい動作、気息を整えていきます。これは、つぎの活動的な動作へ移行する前の動作です。
射法八節の「胴造り」は、終始行射の根幹となり、射がうまくいくかどうかを左右します。
射法八節の「胴造り」は、外形的には一見単純な動作のように見えます。
しかし『意識』して行う最も重要なもの、それが『胴造り』です。
胴造りでの補足説明
- 『胴造り』とは、足踏みの上に腰を据え、胴体を自然な形で整えた形状。足踏みに上体を据えた行射過程の一つ。射法八節の2番目の動作になります。
- 『丹田』とは、『たんでん』と読みます。おへその約3cm下の下腹部にあり、体の重心部であると言われています。丹田は健康やうつ病の改善にも効果があるといわれている場所で病を根源から改善する時にでてくる用語でもあります。例:丹田を鍛えると代謝や免疫力が向上する。集中力が増す。etc
- 『本 弭』とは、『もとはず』と読みます。弓の下にある弦をかける部位のことを指します。
3、弓構え(ゆがまえ)
(出典:いばキラTV(公式))
取懸け、手の内、物見を行う
とカンタンな説明ではさせていただきました。
初段の審査にも役立つ内容ですが、実際に射法八節を学び稽古に役立てるために見て頂きたいです。
それでは、射法八節の『弓構え』について掘り下げて解説していきます。
射法八節の『弓構え』はいよいよ射の活動に移る直前の動作です。静から動へと動く一歩手前の動作とも言えます。
なので、射法八節の『足踏み』⇒『胴造り』による姿勢と呼吸を整えて基礎体勢をつくりこの『弓構え』に入るわけです。
呼吸を整え気力を充実しないとこの『弓構え』へと移行して動作はできません。
気力を満たしてから射法八節の『弓構え』へと移りましょう。
射法八節の『弓構え』には、2つの構え方があります。
1つは正面の構えです。
もう1つは斜面の構えです。
どちらも射法八節の『弓構え』の中には、3つの動作が含まれています。
その3つとは、
- 取懸け
- 手の内
- 物見
の3つになります。
この動作3つが含まれ射法八節の『弓構え』になります。
正面の構え
弓と弦との間に射手の顔があるように構えます。
親指を弦にかけて・・・
- 四つカケの場合は、薬指で親指を押えて中指人+差指を添えます。
- 三つカケの場合は、中指で親指を押えて人差指を添えて親指ははねるようにして柔らかく添えます。
これを「取懸け」と言います。
左手は正しく弓の握り皮の部分を握りましょう。
そして手の内に定めます。
正面の構えの場合は、正面で取り懸けて構えます。
斜面の構えの場合は、取懸けたあとに左斜で手の内を整え弓を押し開いてから『弓構え』を行って行きます。
動画は正面の構えでの解説になっています。
『取懸け』は右手の前膊と弦が90度になるようにします。
手首が曲がりやすくなるので、手首が曲がっていないかをチェックしていきましょう。
『手の内』というのは、卵や壊れ物を握るような気持ちで行う事で古くから『鵜の首』『卵中』『握卵』『紅葉重ね』などという比喩が使われています。
『手の内』を上記の様な握りで持つ事で弓の力は最大限に発揮されます。
そして、矢を射抜く速度、最後まで矢の威力を落とさずに的を射抜く集中力にも影響するのが『手の内』です。
上記のすべてができて弓道の術語では『物見を定める』というふうに言われています。
頭は真っすぐに的にむけて、手首・ヒジなどは柔らかいものを握る様なきもちで弓矢を保つことが大事です。
多くの鍛錬を積んだ実践者や先生などによく教わり上達を図りましょう。
弓構えでの補足説明
『弓構え』とは、弓を射る前段階までの準備を指す。
- 『足踏み』
- 『胴造り』
で体の土台を整えてから、『取り懸け』⇒『手の内』を調整していきます。
的を確認して注視する『物見』を定めて、射抜く為の次の動作『打起こし』のための準備が完了した状態を指します。
『取懸け』とは、弦にかけた手のことを馬手(めて)と言いますが、馬手を矢を弦に充てがい絡ませます。それと同時に矢をキープすることを指します。
『手の内』とは、弓手(押手)で弓の握り方やその方法と形のことを指します。
『物 見』とは、的を注視するために、顔を的の中心に向けることを指します。
4、打起し(うちおこし)
(出典:いばキラTV(公式))
角度は45度程度。両肩を下に沈め、ほぼ水平で体と平行に。
初段の審査にも役立つ内容ですが、実際に射法八節を学び稽古に役立てるために見て頂きたいです。
このように射法八節の『カンタンな説明』では解説しましたが、この射法八節の『打起こし』を掘り下げてさらに詳しく解説していきます。
射法八節の『打起し』とは、射法八節の動作で行ってきた、動作から弓を引く動作のことを言い、弓矢を持った両方の手を上げる動作のことを指します。
また射法八節の『打起し』には2つの方法があるのでこちらも併せて解説していきます。
- 正面打起し
- 斜面打起し
正面打起しと斜面打起しという2つの方法をそれぞれ解説していきます。
『正面打起し』の方法
『弓構え』の位置のまま静かに両方の手を同じ高さに打起す方法を『正面打起し』と言います。
『斜面打起し』の方法
斜面の『弓構え』をとった場合に斜面の弓構えから左斜面に打起すことを『斜面打起し』といいます。
『打起し』の角度について
『打起し』の角度は、45度を基準とするのが良いとされています。
しかし、身長・手足の長さや年齢によっても多少差が生じますので、基準をベースに考えてあなたが『打起し』の動作を行いやすい場所を見つけてください。
『打起し』の心得とは
『打起し』を行う時には精神的にも安定させた状態で体もリラックスさせて呼吸を整え、のびのびとした状態を作り上げていきましょう。
『胴造り』が崩れないようにしていきます。
手や腕に余計な力や力みがあると安定が難しくなりますので、リラックスした状態をたもちます。
矢は常にほぼ水平に且体と平行に、両肩はその下にあるようにしましょう。
ゆっくりと呼吸に合わせて緩やかに静寂のなか『打起す』と良いでしょう。
打起しでの補足説明
射法八節の『打起し』・・・弓構えをして、弓を最も引き分けやすい位置にセットすることを指します。また弓を持ち上げる動作のことを『打起し』と言います。
5、引分け(ひきわけ)
(出典:いばキラTV(公式))
左右均等にほぼ水平に口割りより下げず、弦を胸部につけ、縦横十文字をつくる。
と射法八節のカンタンな説明では引分けについて解説しましたが、こちらでは更に掘り下げて引分けについて解説していきます。
初段の審査にも役立つ内容ですが、実際に射法八節を学び稽古に役立てるために見て頂きたいです。
射法八節の『引分け』の動作は、打起しを行った弓を左右バランスよく引分けるという作業のことを『引分け』と言います。
射法八節の『引分け』は射を抜くまでの最も重要なポジションです。
射法八節の『引分け』の善し悪しによっては、射法八節の次にくる『会』と『離れ』に大きく影響してきてしまします。
昔は、『引分け』のことを『引取り』と呼んでいました。
射を行う場合には、弓を左右に均等に引き分けることから、表現どおり今では『引分け』と呼んでいます。
『引分け』の方法は3つの方法があります。
- 正面打起しをして、『大三』を考え一連の流れを中断せずに引分ける方法
- 正面打起しをして、『大三』で-押大目引三分一をとって引分ける方法
- 左斜面に打起しをして、一切とめずに三分二をとって引分ける方法
上記のどの引分けをおこなう時でも、両手の拳にほぼ水平(または矢先がわずかに低い程度)にし、矢は体と平行に運び、矢先が上をむかないように、的の中心に向かって水平に保ちます。
そして左右均等に引分けていきます。
弦の通る道を弦道と呼びます。
その弦道は額から1~2拳の間のところで、左手の拳は的の中心に向かいおしすすめます。
右手の拳は肩先の矢束目一杯の場所まで引きます。矢束は自分で引く事のできる矢の長さです。
そして、頬に矢があたる様に口のあたりで引き、弦は軽く胸にあてます。
弦を胸にあてることを胸弦と言います。
この状態で縦横十文字の形を作り上げます。
『大三』または『三分二』などの場合、外観的には形がとまっているように見えますが、体全体の働き『張り』を考えているからこそ行われる規則でもあります。
『引分け』の動作は、腰を中心とします。
腰を土台として、腰と息合いとお互いにかみ合っている事がとても重要になります。
『引分け』の動作を取る時はゆったりと静かに、川のせせらぎのように左右均等に『引分け』をしていきます。
この時に、胸側の筋骨と背中の筋骨を使って胸側の中筋から両方に左右均等に開くようにします。
イメージとしては体を弓の中に割って入るような気持ちでいると良いのではないでしょうか。
実際には、体で引くことが肝心なので、これが正しく行われると弓矢と体との縦横十文字も綺麗に整えることができ、弓と体が同化されたように一体感がでます。
引分けでの補足説明
『大三』とは、『押大目引三分一(おしだいもくひけさんぶんのいち)』を省略した名称です。
弓を押すには力を多くして、引くには三分の一の力を使いましょうという意味があります。
別の意味で、引き分けの一時期のことを『大三』という場合もあります。
『三分二』とは、弓を引く際に、矢束を3つにわけてその2番目まで引くことを指します。
算術的に三分の二を引く意味ではありません。
6、会(かい)
(出典:いばキラTV(公式))
詰合いと伸合いをしっかりおこなう。
と射法八節のカンタンな説明では解説しましたが、実際に詳しく射法八節の『会』について解説していきます。
初段の審査にも役立つ内容ですが、実際に射法八節を学び稽古に役立てるために見て頂きたいです。
『会』は形式上では『引分け』の完成された状態を指しています。
射手の心理から考えると、『会』は究極の『引分け』といえるのではないでしょうか。
『射法八節』の今までの動作はすべてこの『会』に到達するための行動です。
精神・体・弓矢が一体となる状態で、完全に射を射抜く準備が熟して、あとは放たれる瞬間を待つ、まさに弓射の極致です。
『会』において重要なのは
- 『詰合い』
- 『伸合い』
です。
『会』を構築する上で必要不可欠なのは、縦横十文字の規矩を正しく守ることにあります。
それには左右均等に『引分け』を正しく準備していないとなりません。
『会』では、縦横十文字の規矩をしっかりと形成されて、五重十文字が構成され、天地左右に伸び合うためには射法八節の段階である、要所要所の詰合いが充実していて、十分でなければ『会』も崩れます。
なので、詰合い・伸合いが射の善し悪しを生む絶対的な条件になるわけです。
詰合いは、『会』にはいったとき、縦横十文字の規矩が構成されることが重要です。
そのため、各所の詰合いがトータルに働かなければ相対的に崩れてしまいます。
縦線の構成
両足底⇒腰⇒両肩が、上方から見たとき正しく一枚に重なっていて、脊柱、項が上方に伸び、姿勢・下半身が安定していると共に上半身を伸びている状態。
これを『三重十文字』と呼び、縦線を構成する基本の条件になっています。
三重十文字には『ひかがみ』の働きが重要になります。
横線の構成
左右の肩を基点として、両肘、左右両腕の張りを確認します。
両腕を貫通している中筋をもって左右均等に張り合うことがとても重要になります。
両手の拳で張り合わないように心がけていくようにしましょう。
手先も同様で、張り合わないように心がけていくようにしましょう。
さらに左手(押手)の角見(親指の根)と右肘の張り合いを行います。
同時に胸の中筋より左右に胸を開くようにします。
古くから、これを『詰合い』と言い回しています。
そして、『五部の詰』や『四部の離れ』などと呼ばれています。
伸合いのコツ
伸合いは、射では絶対に必要なの条件です。射に伸合いがなくては、手先だけで矢を離すことになります。
伸合いは、矢束を引き伸ばすことでできるのではありません。
伸合いは気力を充実させることが重要になります。
縦横十文字を中心として、心を安定させて、平常心を保ち、気力のみなぎらせることによって気が満ちて来るものです。
膨張した風船が破裂して離れなければならないようなイメージです。
これが伸合いのコツです。
そして『やごろ』という一項を解説する弓道の指導もいます。
『離れ』の直前の状態のことを『やごろ』と言います。
弓と矢の離れようとするその瞬間が『やごろ』となります。
この時に重要なのは単純に技によって矢を離すわけではないということです。
気力がなくては技は生きてきません。
気力を大事にすることが重要なのです。
『気は技に優先する』ことを学ばなければなりません。
心のない射は、そのまま矢に移ります。
射法八節の『会』は心理的には不動心です。
雑念や執着心や欲望を的に求めていっては、邪念が入り成り立ちません。
射法八節の『会』は、正しい信念に基づき克己、冷静、忍耐、決断力の心気の充実にすることです。
逆に迷い、疑い、不安、弱気、優柔不断等の邪念が入らないようにすることでもあります。
この修練は、人生そのものです。
射法八節は人生を表しているといっても決して過言ではありません。
ねらいのコツ
『会』では、ねらいがあります。
ねらいとは、矢が的の中心に向かっていなければならない。
ねらいでは両眼とも開いたままで、左の目尻と右の目頭の視力を使います。
左拳と弓の左側を的の中心として見通していくのが原則です。
通常射距離28メートルの的前では水平です。
当たり前といえば当たり前なのですが、距離が近い場合や遠い場合、弓の強い弱い、矢の重さによって左拳の高さを微調整して的にねらいを付けるのです。
会での補足説明
射法八節の『会』とは、自然と矢束を引き締め、押し引きを努めて離れに至る途中の過程のことを言います。
『詰合い』とは、矢束を目一杯に引き納めて、狙い、頬付け、胸弦の3つの状態を同時に行う様子を指します。
『伸合い』とは、詰め会った後、心も体も充実している状態を指します。
やごろを指導される師範や先生もいますが、やごろはそれだけ重要で、射手のもっとも神経を研ぎすます時間、射法八節では最も大切なリアクションでもあります。
『やごろ』とは、詰め合って後伸び合いそれが極に達しているころでしょうか。
まさに矢と弓が離れようとするその瞬間を『やごろ』といいます。
『三重十文字』とは、足底・腰・両肩(三重)が、上方から見たとき正しく一直線に重なることを指しています。
それと同時に、脊柱・うなじが天に伸び、下半身を安定させて共に上半身を伸ばすと『三重十文字』が形成されます。
『五重十文字』とは、射形上十文字になるところがが5つあります。
それぞれが全て、重要であるのでこのように名付けてありますので参考になさってください。
- 弓と矢
- 手の内と弓
- ゆがけの親指と弦
- 胴と両肩
- 首と矢
7、離れ(はなれ)
体の中筋から左右に開くように伸長し、自然に離れる。
カンタン説明ではこのように解説をしました。
こちらでは掘り下げて『離れ』について解説していきます。
初段の審査にも役立つ内容ですが、実際に射法八節を学び稽古に役立てるために見て頂きたいです。
射法八節の『会』が完成されると、次に『離れ』という動作がおこります。
射法八節の『離れ』は、矢の発射を意味します。
体の中筋から左右に開くように伸ばして、気合の発動と同時に矢が離れていく状態を指します。
『会者定離』という仏教語があるのですが、まさに『会』と『離れ』は『会者定離』です。
『会』で気力と共に力がまとまります。
『会』が充実して、矢に灯されて、『離れ』が生じます。
したがって、「離れ」は、自然に離れていくものです。
離したりするものではなく、離されるものでもないのです。
例をあげれば、雨が降り、葉っぱの上に雨のしずくが溜まります。しずくが大きくなると自然に落ちます。
弓道の射法八節の『離れ』では、自然の流れに身を任せ、機が熟して自然に離れていくことを表しています。
・縦横十文字に組合った基本体型を作り、伸合いの後、胸の中筋から左右に割れるように『離れ』を作りましょう。
- 弓手の『離れ』
- 右手の『離れ』
- 伸合いのない合わせ『離れ』
この3つを気にしましょう。
決して、小手先て離さないようにしましょう。
射法八節の『離れ』は軽快にして妙味でなければならないといわれています。
軽妙な『離れ』とは、どういったものかというと・・・
小手先での技術ではないということです。
技も然ることながら、気力が満ちていて、気合がしっかりとのっていること、心身からの爆発力によって『離れ』が熟すといっても良いです。
『離れ』での射癖の改善方法
離れでの射癖は大きくわけて3つあります。
- 大離れ
- すくい離れ
- ゆるみ離れ
上記3つの射癖があります。
その中でも『ゆるみ離れ』は直しにくい弓道の中でも『弓道3大射癖』と言われる射癖です。
改善方法を見つけて上達して頂きたいと思います。
8、残心(残身)(ざんしん)
(出典:いばキラTV(公式))
離れの姿勢を崩さず、その気合いを維持する。
と射法八節の『残心』についてカンタンに説明をさせて頂きましたが、ここではもう少し掘り下げて解説させて頂きます。
初段の審査にも役立つ内容ですが、実際に射法八節を学び稽古に役立てるために見て頂きたいです。
残心とは、矢の離れた後の姿勢の事を言います。
『離れ』で矢が放たれたことによって、射法八節が完成したのではありません。
この『残心』があってこそ射法八節は成り立つ事になります。
『ざんしん』には2つの解釈があります。
1つは精神から見た『ざんしん』です。
これは『残心』で『ざんしん』です。
もう1つは形状です。
形状で言う『ざんしん』は『残身』です。
『残身』(残心)は『離れ』から生じた結果です。
『離れ』の状態からの延長に『残身』(残心)があるので、『離れ』の状態から、気合いがこもっている状態でこそ、『残身』(残心)に繋がるものがあります。
繰り返しになりますが、一貫した射法八節が立派に完成された時は、『残身』(残心)も自然立派になってきます。
『残身』(残心)の良さが弓倒しにも現れてきます。
射法八節の『残身』(残心)の良し悪しによって射全体(射法八節)の判定ができてしまいます。
射手の品位格調が反映するのが『残身』というわけです。
『残身』(残心)があり、その後に弓を呼吸に合わせて倒します。
この弓を倒す作業をを『弓倒し』と言います。
その後、物見(顔の向き)を静かにもどし、足を閉じます。
ここまでの動作までがすべて終わり『射法八節』が完成します。
なので、『残身』のあとの動作である弓倒し⇒物見もどし⇒足閉じるまでは『残身』にふくまれるものとして気持ちを保っておこなっていただきたいです。
遠足で学校の先生に『帰るまでは遠足です!』
と言われるあれですね。
弓道でも全ての動作が終わるまでは、射法八節は完成していないのです。
射の善し悪しで不自然な弓倒しやつくろった弓倒しは当然NGです。
射法八節の『残身』を大切に完結させて頂きたいと思います。
射法八節のまとめ
『残身』あとの足の閉じ方
足の閉じ方には3つの方法があります。
- 脇正面に向かったまま右足より半歩づつ引きそろえる。(上座より寄せる場合もある)
- 的正面に向かいつつ、左足を右足に引きそろえる。
- 的正面に向かいつつ右足を半歩寄せ左足を引きそろえる。
足の閉じ方は、『足踏み』の足の開き方と対応するもので、下記の方法を原則とします。
- 開き方①を行った場合は、閉じ方②の方法による。
- 開き方②を行った場合は、閉じ方③の方法による。
射法八節の呼吸方法とコツ
ひとつの動作はひとつの息(吸うか吐くかのいずれか、吸って吐くのではありません。)というのが原則です。
八節というのは竹の節目のような意味であり、その各々の動作が途切れてはいけないものです。
ですので、動作は呼吸にあわせて行うもので、動作を停めて呼吸をするというのは原則としていけません。
射位に進む時から、すべて目安となる呼吸が決まっています。文章ではかき切れませんので先生から指導を受けてください。
呼吸が合わないと大勢での演武はできなくなります。昇段審査のときにも困ります。例えば、原則的には打ち起こしは吸ってあげます。その後は吐きながら引き分けて離れまでは一息が理想です(たいていできませんけど)。
吸いながら打ち起こして、打ち起こしの動作が終わって息を吐いて、吸いながら大三なんていうことはしてはいけないのですが、八節の意味を理解していない人や、まだ未熟な人はそんな風になりがちです。
八節の動作の一つごとに息を吐いて動作を途切れさせるなどということは射法を理解していない、やってはいけないことです。(出典:Yahoo!知恵袋より)
このような形で射法八節の中の1節の中でも呼吸を作る事が重要になっていることがわかります。
射法八節の『打起し』での呼吸方法のコツ
打起しは射の活動に入る前のとても重要な1節です。
『打起し』では弓を持ち上げ体・心の形を整える準備をするわけです。
その打起しを崩さない為にも弓の持ち上げる方法も大切ですが、それと同時に呼吸の方法が射を安定させ、『打起し』を適切に進める事ができるコツです。
範士の先生の説明を引用させて頂きます。
「打ち起こし」以後は、呼吸をしないよう(息がこぼれる程度ならよい)に心懸ける。呼吸をするとそのたびに全身のつりあい、緊張した調和に破たんが生じ、真の自慢が得られない~高木範士~
引用元:(理論弓道より)
『弓構え』で息を吐いて空にして響き、打ち起こししつつ軽くすい、上がりきって弓が止まるのといっしょに息を止める。息を止めたままで三分の二引き~浦上範士~
引用元:(理論弓道より)
打ち起こしの際、気息は十分に整える。~千葉範士~
引用元:(理論弓道より)
息合いは普通平静を可とする~宇野範士~
引用元:(理論弓道より)
特別に強く吸引すると、助間筋や横隔膜などの呼吸補助筋が働きすぎて凝りを生じ、射の動作の円滑を欠いたり、息が詰まったり、また力むことになる。~高木範士~
引用元:(理論弓道より)
『打ち起こし』のときは普通よりやや余分に吸引されているから、この自然に吸入された状態で、胸腔内の圧力は全身の緊張と同調することができるのである。~高木範士~
引用元:(理論弓道より)
射法八節の『会』での呼吸方法のコツ
『会』での呼吸方法のコツをここでは解説させていただきます。
『会』の状態は『引分け』からの引き継ぎになります。
左右対称に引分けた状態を保ちつつ、気合いも保ちつつという状態を『会』で保つことがとても重要です。
『会』に必要な呼吸のコツを探って行きましょう。
『空間の息』
大三では息を吸い、引分けでは呼吸を吐く、そして『会』では体内の空気をすべて出し切るまで呼吸を吐き続ける方法が『空間の息』と呼ばれれるものになります。
『空間の息』では『会』で呼吸を吐き続け全てを出すことを推奨していますが、なぜ吐き続けることがよいのでしょうか。
呼吸を吐き続けると胸が縮まり体勢が若干ですが、前傾になります。
この姿勢は上半身の重みが『丹田』にのります。
『丹田』に乗った上体は首の周りに負荷が最も少ない上体を保つ事ができます。
つまり姿勢がとても良い状態を作り上げるわけです。
それに付け加え息を出し切るまで呼吸をつづけることにより得られる効果があります。
それは、精神状態を落ち着かせる事ができることです。
単に胸を張り肺呼吸をしてしまうと、気分が落ち着かなくなり、『会』での集中力を失うことになります。
- 会で力みが出てしまう
- 会で慌ててしまう
- 会で体がブレる
このような状態を生んでしまいます。
肺呼吸ではなく、腹式呼吸で『丹田』を意識しておくだけで、気持ちは落ち着き、射法八節に良い流れをもたらします。
なので・・・
- 会で力みが出てしまう
- 会で慌ててしまう
- 会で体がブレる
このようなことで『会』の呼吸で悩まれている方は『空間の間』を取り入れてみてはいかがでしょうか。